TOPICS

トピックス

令和5年度 トピックス一覧

R5年5月 TOPICS
コロナウイルス感染の後遺症(続)
倦怠感について

清水医院 今月のコラム

 コロナウイルス感染症後の後遺症の概略について前回のトピックスで紹介させて頂きました。今回は、コロナ感染後遺症のなかでもしばしば見られる全身倦怠感についての対応について私見を述べさせて頂きます。倦怠感を東洋医学的にみると、★胃腸の働きの低下(脾虚)、★自律神経のアンバランス(肝鬱)、★血液流動性の乱れ(瘀血)、★身体の各所の水分バランスに乱れ(水毒あるいは陰分の虚)、★深部体温の乱れ(裏熱あるいは裏寒)、★身体の乾燥度合い(燥湿)の乱れが、複雑に絡み合っているようです。したがって、全身倦怠感といっても個別の対応が必要になってくることが多いです。
 コロナ感染後遺症としての全身倦怠感の方に対して、ちまたでは○〇〇〇〇という漢方薬を飲むと良いらしいといった話が蔓延しており、患者さんがドラッグストアで自己購入したり、医療機関でも〇〇〇〇〇が良いらしいとの情報をもとに、全国的に医療機関において処方が集中したりするようで、漢方メーカーは〇〇〇〇〇を製造するために、他の医療用漢方製剤の生産製造がかなり遅延してしまう状況に陥ってしまい、医療機関で必要に応じた個別の漢方製剤を処方したくても、その医療機関の前年同期での医療用漢方製剤の処方実績に見合った量しか問屋さんから提供されない、非常に変則的な厳しい現状があります。
 そもぞも、コロナ感染の後遺症といっても、様々な身体症状や精神症状があり、全身倦怠感についても、☆胃腸の働きに問題がある場合、☆ストレスで自律神経のバランスに乱れがある場合、☆血液の流れが滞っている場合、☆身体の深部の熱が上がりすぎている場合、☆乾燥が強い場合などなどケースバイケースでの処方選択が必要になってきます。全身倦怠感には、〇〇〇〇〇が効くといったチャート式の考え方ではなかなか効果は出にくく、誘因は一元的ではなく複雑であることが多いです。したがって、人によって使用される漢方製剤はおのずと変わってくるのです。
 自分で出来ることとして覚えておいて頂きたいことは、『養生』になります。日々の生活で出来ることから対処することが要であると思います。
 1.胃腸の働きを改善させる食養生(野菜→タンパク質を7~8割食べた後に→残りのタンパク質を炭水化物と一緒に食べる)、腹八分目で。
 2.便通対策の意味で起床時のコップ半分量のおさ湯飲み。
 3.自律神経のバランスを整えるための腹式呼吸、日付が変わる前の就寝、就寝環境への配慮(真っ暗にして休む、あるいはフットライトは軽めに)。
 4.軽い運動食後の軽作業、軽運動、散歩、ラジオ体操、部屋掃除など)がポイントと考えます。これらの養生を行ったそのうえで、それぞれの方の身体の状態に応じた漢方製剤を医療機関で考えて頂くことが大切だと思います。全身倦怠感の誘因は一元的ではないということ、出来うる養生を行いながら、かかりつけ医に相談なさることが良いのではないでしょうか。

R5年4月 TOPICS
コロナウイルス感染の後遺症

清水医院 今月のコラム

 コロナウイルス感染症の流行も収束傾向を見せ始めましたが、まだまだ気が抜けない状況です。感染対策やワクチン接種の効果もあると思いますが、いまだに散発的な発生状況です。そのような中で、コロナウイルス感染症後の後遺症に苦しんでおられる方々も多くおられます。様々な身体症状、精神症状が単一、あるいは複合的に絡み合って日常生活の質を落としてしまい社会生活に支障を来しています。
 代表的な症状は、全身倦怠感、なんとなくきつい、味覚あるいは嗅覚の異常、息切れ、脱毛、ちょっとした物忘れが目立つようになった、気持ちが沈みやすい、朝起きれない、寝付けない、熟睡できない、微熱が続くなどの症状が多いようです。国立国際医療研究センターからの報告では感染者の状況を調べてみたら、6か月後には26.3%に後遺症の症状が残り、その後さらに1年後には8.8%の方に後遺症の症状がいまだに残っているとの報告もあります。
 コロナウイルス感染の後遺症の方を漢方的に見てみると、胃腸の働きが低下気味(脾虚)、血液の流れがスムーズに流れにくい(瘀血)、自律神経のバランスが乱れている(肝鬱)、身体の各所の水分バランスの乱れ(水毒)、それと身体の深部体温と表在体温の乱れ(寒熱のアンバランス)があるようです。
 コロナ後遺症に対する私見ですが、基本的な対策は、先月のトピックスでも触れましたが、まずは、食事、胃腸の働きが要です。次に排泄、睡眠、適度な軽微な程度の運動が要になるかと思います。様々な後遺症症状に対して、対症療法としての薬剤が投与されているのが現状ですが、『食事、排泄、睡眠、適度な運動により、胃腸の働きを立て直して、自律神経のバランスを整える、つまり腸脳相関のバランスをとり、血液の流れをスムーズにして身体に有害な物質を代謝、解毒、排泄して、身体の各所の細胞の本来持った機能を改善回復すること』が要であると思います。
 私は、病態に応じて漢方製剤を頻用しますが、食事療法も大切です。魚に含まれるDHAが頭に霧がかかったようなブレインフォグに良いようだとの発表もありますが、明確なエビデンスはまだ出ていないようです。コロナ感染の後遺症対策の基本は、『養生あっての治療』だと思います。

R5年3月 TOPICS
皮膚は内臓の働きの鏡

清水医院 今月のコラム

 皮膚病の悩み、コロナ禍の影響もあってか、老いも若きも、女性も男性もお肌のトラブルの相談が多くなってきている印象があります。運動不足や間食の影響もあるかとは思います。
皮膚科で適切な治療が行われてもなかなか皮膚症状の改善が得られない方からの相談のなかで、内臓の働きの乱れが関与していると思われる場合も多いです。ご本人はあまり自覚されていないことが多いようですが、食後のおなかの張り、便通異常、熟睡感に乏しい、些細なことでイライラしてしまい家族と衝突してしまう、女性の場合は月経前の気分不良、イライラ、頭痛、めまい、耳鳴り、便秘、下痢など様々な精神症状や身体症状があるにもかかわらず、ご本人はお肌の不調がメインの訴えで、その他の症状に関しては、少しは気にはなっているけれどもお肌の事への心配が中心になっておられる場合があります。
 食事の内容をお尋ねすると、食抜きしているとか、パンとコーヒー、フルーツ中心とか、カップ麺で済ませているとか、缶コーヒーや清涼飲料水で済ませているとか、3食きちんと食べていない、食抜きしている、炭水化物やフルーツで済ませるなど食習慣の歪があるようです。これらの食習慣は自律神経のバランスを乱してしまい胃腸の働きを損ねてしまい皮膚を丈夫にするために必要な栄養素が消化管から十分に消化吸収されて補給されないことが、皮膚の不調の一因かもしれないこと、さらには栄養素の不足が様々な身体症状や精神症状の誘因になっている可能性もあることを説明し、まずは1~2週間でも胃腸の機能を改善させ身体が要求している栄養環境、腸管環境に近づけるための食習慣の改善、チャレンジをしてみてはどうでしょうかとお薦めしています。
 具体的には、まずは、ビタミンB群の浪費を防ぐ意味で、①血糖の乱高下を防ぐ(野菜→肉あるいは魚→炭水化物の順番での食事→食後に10分くらい身体をかるく動かす(ラジオ体操や散歩など)、②炭水化物や果物の間食はやめる。補食として、アレルギーが無ければ素焼きのナッツなどでしのぐ、③グルテン対策で和食中心(お米や芋中心にしてみる)、カゼイン対策でヨーグルトの連日摂取は避ける、③日が変わる前に、可能であれば早寝早起き(免疫力を維持する意味で副腎機能を元気にする目的)、朝お日様の陽で目覚めることが望ましい。
①②③が実行されると、腸内環境が整いやすくなり、ビタミンB群やビタミンDの環境にも朗報で、皮膚の健全化や自律神経の乱れ(様々な身体症状や精神症状)を起こしにくくするために必要な栄養素が吸収されやすくなります。結果的に、皮膚症状や自律神経の乱れに伴う身体症状や精神症状の改善にもつながります。胃腸の症状や精神的症状の軽快と共に皮膚症状の軽快が自覚される場合もあります。胃腸を丈夫にすることは、皮膚を丈夫にすることでもあります。皮膚は内臓の働きの鏡といわれるのもうなずけることだと思います。

R5年2月 TOPICS
腸内細菌と脂肪酸

清水医院 今月のコラム

 肥満と中性脂肪と聞けば、痩せ願望を連想される方も多いと思います。しかし、身体の大部分を占める中性脂肪はグリセロールと脂肪酸が結合して成り立っています。さて、この脂肪酸には3種類あって炭素の数の多い少ないにより、炭素の数が少ないものから短鎖脂肪酸中鎖脂肪酸、多い長鎖脂肪酸に分けられます。短鎖脂肪酸は酢酸、酪酸、プロピオン酸などが代表的ですが、腸内細菌の善玉菌を増やし腸管の働きをサポートするのになくてはならない脂肪酸なのです。次に、中鎖脂肪酸は皆さんご存じかと思いますが、MCTいわゆるココナッツオイルです。比較的吸収が良くてエネルギーに変換されやすい脂肪酸です。最後に、長鎖脂肪酸はごま油、サラダ油など日常よく使うものです。
 次に、脂肪酸と腸内細菌との関係ですが、人の腸内には、善玉菌、日和見菌、悪玉菌が存在していて、ある一定のバランスによって腸内フローラを形成しています。このバランスが乱れると便秘や下痢、腹痛、腹部膨満などの症状が出てしまいます。短鎖脂肪酸は腸内細菌から作られ、腸内の環境を正常に維持する役目があります。ビフィズス菌はキャベツなどの食物繊維やオリゴ糖を利用して酢酸や乳酸などの短鎖脂肪酸を作り出し、腸内環境整備を行ってくれます
 キャベツとお酢を混ぜた、酢キャベツなどは健康に良いでしょうね。

R5年1月 TOPICS
冬場の上気道感染症後の喉の違和感

清水医院 今月のコラム

 明けましておめでとうございます。寒さ厳しい新年、健やかに過ごしたいものです。今回は、冬場の上気道炎後の頑固な喉の違和感について触れてみたいと思います。一般的な感冒、インフルエンザ、コロナ感染などの感染性疾患罹患後の喉の違和感を訴えられるかたが多いようです。違和感が持続する場合は必ず耳鼻咽喉科や呼吸器内科を受診して検査を受けることは必要です。検査後、治療を受けてもなかなか喉の違和感が改善しない、あるいは検査を受けたが異常なし、しかし症状が持続するといった方も以外に多いようです。このような場合、東洋医学的には、肝鬱瘀血血虚水毒脾虚といった状態が単独あるいは複合的に見られるようです。
 誘因として。ストレスのため首の筋肉の緊張が強くなると喉の筋肉の緊張(肝鬱)が高まってしまう場合、首が前屈しすぎて姿勢が悪い場合は頸部の血流が悪くて(瘀血)喉の粘膜が充血気味になってしまう場合貧血気味血虚)の方は粘膜が浮腫みやすくなってしまう水毒)場合、胃腸機能の低下のため胃酸が逆流してしまう逆流性食道炎の場合脾虚が考えられます。
 対策として、脾虚血虚対策として、まずは3食きちんと食べ鉄分含有の動物性蛋白質(肉魚)や植物性蛋白質とビタミンC、緑黄色野菜を中心とした食生活を心がけること。瘀血水毒脾虚対策として、甘いものや果物を空腹には食べず、食後に食べるように心がけ、糖質摂取後は15分くらい有酸素運動を行うこと。瘀血肝鬱対策として、腹式呼吸と胸を張った姿勢、さらには水毒瘀血対策として、頸部の血流をアップさせる意味でも両手腕をアームウォーマーで温めたり項から上背部を保温することで頸部の血流を増やし浮腫み取りに繋がりやすいと思います。
 長引く喉の違和感は、まずは専門医受診、さらにはセルフメディケーションを取り入れると良いでしょう。