
コロナウイルス感染症後の後遺症の概略について前回のトピックスで紹介させて頂きました。今回は、コロナ感染後遺症のなかでもしばしば見られる全身倦怠感についての対応について私見を述べさせて頂きます。倦怠感を東洋医学的にみると、★胃腸の働きの低下(脾虚)、★自律神経のアンバランス(肝鬱)、★血液流動性の乱れ(瘀血)、★身体の各所の水分バランスに乱れ(水毒あるいは陰分の虚)、★深部体温の乱れ(裏熱あるいは裏寒)、★身体の乾燥度合い(燥湿)の乱れが、複雑に絡み合っているようです。したがって、全身倦怠感といっても個別の対応が必要になってくることが多いです。
コロナ感染後遺症としての全身倦怠感の方に対して、ちまたでは○〇〇〇〇という漢方薬を飲むと良いらしいといった話が蔓延しており、患者さんがドラッグストアで自己購入したり、医療機関でも〇〇〇〇〇が良いらしいとの情報をもとに、全国的に医療機関において処方が集中したりするようで、漢方メーカーは〇〇〇〇〇を製造するために、他の医療用漢方製剤の生産製造がかなり遅延してしまう状況に陥ってしまい、医療機関で必要に応じた個別の漢方製剤を処方したくても、その医療機関の前年同期での医療用漢方製剤の処方実績に見合った量しか問屋さんから提供されない、非常に変則的な厳しい現状があります。
そもぞも、コロナ感染の後遺症といっても、様々な身体症状や精神症状があり、全身倦怠感についても、☆胃腸の働きに問題がある場合、☆ストレスで自律神経のバランスに乱れがある場合、☆血液の流れが滞っている場合、☆身体の深部の熱が上がりすぎている場合、☆乾燥が強い場合などなどケースバイケースでの処方選択が必要になってきます。全身倦怠感には、〇〇〇〇〇が効くといったチャート式の考え方ではなかなか効果は出にくく、誘因は一元的ではなく複雑であることが多いです。したがって、人によって使用される漢方製剤はおのずと変わってくるのです。
自分で出来ることとして覚えておいて頂きたいことは、『養生』になります。日々の生活で出来ることから対処することが要であると思います。
1.胃腸の働きを改善させる食養生(野菜→タンパク質を7~8割食べた後に→残りのタンパク質を炭水化物と一緒に食べる)、腹八分目で。
2.便通対策の意味で起床時のコップ半分量のおさ湯飲み。
3.自律神経のバランスを整えるための腹式呼吸、日付が変わる前の就寝、就寝環境への配慮(真っ暗にして休む、あるいはフットライトは軽めに)。
4.軽い運動(食後の軽作業、軽運動、散歩、ラジオ体操、部屋掃除など)がポイントと考えます。これらの養生を行ったそのうえで、それぞれの方の身体の状態に応じた漢方製剤を医療機関で考えて頂くことが大切だと思います。全身倦怠感の誘因は一元的ではないということ、出来うる養生を行いながら、かかりつけ医に相談なさることが良いのではないでしょうか。