生活習慣病に対して、質の良い睡眠を確保することは、薬物治療などを行う上でも、おろそかにできない重要なポイントです。前回は生活習慣病と睡眠の関係について触れてみました。患者さんから生活習慣病におけるアルコールと睡眠について、もう少し詳しく知りたいとの声がありましたので、今回は生活習慣病における睡眠とアルコールについて触れてみます。
1.アルコールの摂取は基本的には晩酌の際であれば問題は少ないようです。しかし、量が多くなると睡眠の質が低下すると言われています。肝臓でのアルコール分解能力(解毒力)に特段の問題が無ければ、ビールだと1日に500ml缶を1缶くらいであれば問題は少ないと言われています。
2.水分をしっかりとると数時間後にはアルコールの分解の助けにもなります。また、ひとり酒になるとピッチが速くなりやすいので過量飲酒にならないように注意が必要ですし、おつまみをきちんと用意しておくことが望ましいでしょう。またできれば周囲と会話を楽しみながらゆっくり飲むことが望ましいでしょう。
3.しかし、日々の疲れが取れずにお疲れモード状態で生活されていると話は別です。1日おきの晩酌にした方が無難でしょう。週に3日ほどの休肝日を設けたらいかがでしょうか。
4.睡眠がうまく取れない方の中には、アルコールは気分転換やストレス解消になると思い込んでおられる方がいらっしゃいます。これは誤った認識です。気分が滅入っているときに、毎日飲酒すると気分の落ち込みが更に増悪する場合もありますので、アルコールに頼るのではなく、早寝早起きの生活習慣にライフスタイルをシフトすることをお勧めします。
5.寝酒をしたら眠れるという方もおられますが、寝酒は全く良質な睡眠の確保には逆効果です。寝酒は、入眠にはやや効果的かもしれませんが、レム睡眠が抑制されてしまい、中途覚醒や早朝覚醒になりやすく睡眠時間が短くなってしまう危険性があります。
6.寝る前にお茶やコーヒーなどカフェインを含んだ飲み物は入眠を阻害しやすいですし、カフェインによる利尿効果で脱水に傾きやすいです。またアルコールは前述のごとく、中途覚醒や早朝覚醒を来しやすいので避けてください。無難なのは寝る前に少量のおさ湯を飲むことが夜間脱水の予防にもなります。
生活習慣病における睡眠とアルコールの関係について簡単ですが触れてみました。
TOPICS
トピックス
令和6年度 トピックス一覧
R6年10月 TOPICS
生活習慣病における睡眠とアルコールについて
R6年9月 TOPICS
生活習慣病における睡眠
生活習慣病に対して、質の良い睡眠を確保することは、薬物治療などを行う上でも、おろそかにできない重要なポイントです。高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の治療中、なかなか眠れない、眠っても数時間すると目が覚めてしまい、睡眠薬を服用してもなかなか朝の目覚めが今一つで、昼間にあくびが良く出て仕事の効率が上がらないとの相談を受けることがあります。
中高年世代の方の場合、男性であれば前立腺肥大などの泌尿器科的疾患、女性の場合は卵巣ホルモンのエストロゲンの減少による膣や膀胱や尿道粘膜が萎縮気味になってきたための頻尿など、泌尿器系がらみの夜間頻尿のために睡眠が障害されてしまう場合があります。かかりつけの医師に相談されると良いでしょう。
一方、泌尿器系に問題がない方でも、なかなか睡眠の調子が今一つという方も多いです。これは、若年層の方においても同様の傾向があります。かかりつけ医や心療内科あるいは精神神経科などから睡眠導入剤、精神安定剤などの投与を受けるも今一つの場合もあるようです。よく患者さんのお話を聞いてみると、なかなか満足した睡眠が得られない方には、似通った傾向があるようです。それは、寝る直前に入浴する習慣がある方、布団の中でスマホやタブレットなどで、ラインやメールやユーチューブなどをやっている方です。
人の身体は、通常では昼間は交感神経、夜間は副交感神経が優位に働きますが、副交感神経が優位に働く時間帯、寝る前に入浴してしまうと体温が上昇し、交感神経が興奮してしまい、お休みモードに突入しつつある脳が昼間モードになってしまうため、なかなか寝付けなくなり睡眠のバランスが乱れてしまいます。また、夜には脳は副交感神経が優位になり、お休みモードに突入しつつありますが、寝る前にスマホやタブレット端末を見てしまうとブルーライトの光刺激で脳の温度が上昇してしまい、昼間モードの交感神経が優位な状況になってしまい、睡眠障害が引き起こされてしまいます。
これら、寝る直前の入浴やブルーライトは睡眠障害の引き金となり、質の良い深い睡眠が得られなくなってしまいます。その結果、身体の疲れや傷ついた遺伝子の修復を担っている成長ホルモンが十分に寝ている間に分泌されなくなり、一日の疲れに伴って生じた過剰な活性酸素を十分に中和することが出来ず、結果的に高血圧、糖尿病、脂質異常症の悪化に拍車をかけてしまいます。きちんとお薬をのんでいても、その効果の足を引っ張ることにもなりかねません。
入浴は早めに済ませ、スマホやタブレットは布団の中では見ないようにしたいものです。ちなみに、入浴は寝る1時間半前までに、スマホ、タブレットなどのブルーライト使用は寝る2時間前までに済ませることが望ましいでしょう。
R6年8月 TOPICS
生活習慣病に対する食事 その2
(体にとって毒になるものから身を守る)
健康志向が高まっているこの頃、高血圧、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病の管理について厚生労働省が生活習慣の面で患者さんに生活指導をしっかりと行うようにとの指針が出ています。しかし、生活指導といっても食事、運動、睡眠などの面で、個々人の体調や病状に応じたきめ細やかな対応が望まれています。
今回は、前回の食習慣の中での留意点に加えて少し補足しておいた方が良いと思われることについて触れてみます。具体的には、私たちの身の回りにある食材あるいは食材に付随したものに含まれる体にとっては毒となるものについて知り、ある程度は自己防衛の意識を持つことです。
1.アルコール: 過度に摂取すると肝臓に負担がかかるので休肝日を週に2~3日設けると良いでしょう。
2.カフェイン: カフェインの摂りすぎは肝臓に負担がかかる以外に交感神経が過剰緊張するので夕方以降の過剰摂取は不眠の誘因になりやすいので注意が必要でしょう。
3.カビ毒: ナッツ類、ピーナッツ類、ドライフルーツ、トウモロコシやバナナなど古くなるとカビが生えやすいので肝臓に解毒の面で負担がかかりやすく、蕁麻疹などの誘因にもなりかねません。古いものは口にしないことが大切です。
4.食品添加物: インスタント食品、ソーセージやハムなどの加工肉には食品添加物が含まれているので、腸内環境を乱してしまい、結果的に肝臓に負担がかかりやすくなります。毎日毎日、口にすることは避けた方が無難です。
5.有害な金属類: 食物連鎖によって大型魚には水銀が多く含まれやすくなっています。毎日毎日、大型魚の摂取は避けた方が無難です。ベーキングパウダーや食材を包むアルミホイルにはアルミニウムが含まれていますから、肝臓や中枢神経に負担がかかりやすいので頻回な使用は避けた方が無難です。
日々の食事に際して、細かなことではありますが、身近なものに含まれる毒との接触の機会を減らしていくことも生活習慣病に対する予防あるいはセルフケアの一つであると思います。
自分の健康は、日々の生活習慣の中の気づきから得られるものだと思います。
R6年7月 TOPICS
生活習慣病に対する食生活について
健康志向が高まっているこの頃、高血圧、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病の管理について厚生労働省が生活習慣の面で患者さんに生活指導をしっかりと行うようにとの指針が出ています。しかし、生活指導といっても食事、運動、睡眠などの面で、個々人の体調や病状に応じたきめ細やかな対応が望まれています。
今回は、生活習慣病に対する一般的な食生活における留意点について触れてみたいと思います。要点としては、以前のトピックスでも触れましたが、大別して5点に集約出来ると思います。
①血糖の乱高下を起こさないような食事の仕方、②古い脂、劣化した脂を避けることで体に炎症体質をもたらさないこと、③体に生じた過剰な活性酸素がもたらす酸化を防ぐための食生活を心がけること、④腸内細菌の悪玉菌を減らして善玉菌や日和見菌を増やす(短鎖脂肪酸を増やす)こと、⑤肝臓に負担をかける食材を避けること、の5点に集約できると思います。
具体的には、①食べる順番として、野菜→魚肉(蛋白質や脂質)→炭水化物(汁物はいつでもOK)→フルーツ。食べ終わったら10分程度の運動(散歩、体操など)を行って急激な血糖の乱高下を防ぐ。もし間食したくなったら、蛋白質や脂質を中心に補食するのが無難でしょう。
②レトルト食品、インスタント食品や洋菓子など、頻回な植物油を含んだ食材の摂取はオメガ6系の脂であるため体を炎症体質に導きやすくなります。炎症体質になりにくい脂はオメガ3系のものが良いです。たとえば、青魚や青魚の缶詰がおすすめ。亜麻仁油、エゴマ油(加熱すると酸化しやすいので生食が望ましい)が良いとされています。調味料は減塩が望ましいでしょう。
③抗酸化成分を含む食材(野菜や果物に含まれている)を食べる。過剰な活性酸素の弊害を抑えてくれる緑黄色野菜や赤、黄色の色彩を帯びた野菜や果物が挙げられます。トウモロコシ、キュウリ、トマト、ピーマン、ミカン、レモン、スイカなど。
④腸内環境を整えるには、腸内細菌が水溶性の食物繊維を分解、発酵し、酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が作られる、それと共に腸内細菌叢のバランスがとれて、食材に含まれる必要な栄養素が消化吸収されやすくなるとともに体に有害な物質の発生を予防してくれる。水溶性食物繊維の具体例として、ネバネバ系の食材(オクラ、もずく、なめこなど)。あとはアボガド、いちご、ゴボウなど。
⑤アルコールの多飲を避ける。アルミホイルにはアルミニウムが含まれているので、食事の際にはアルミホイルはきちんと取り除いてから食事すること。ドライフルーツやナッツ類の古いものを食べるとカビが生えていることがあるので肝臓に解毒という面で負担をかけてしまいやすいので注意が必要です。
以上の点が、生活習慣病の予防対策としての食生活上の留意点と考えています。医食同源、食から健康の維持増進がなされることが要と考えます。ただし、食物アレルギーのある方は、かかりつけの先生にご相談されることをお勧めします。
R6年6月 TOPICS
不定愁訴にまつわるビタミン、ミネラル
自律神経失調症やPMSなどイライラ感やなんとなく不安感が襲って来て落ち着かない、心地よさが感じられない、なかなか寝付けない、しばしば目が覚めて朝起きるのがしんどい、昼間にあくびが頻回に出るなど、様々な身体症状や精神症状にお悩みの方が多いようです。
これらの症状には、ビタミンやミネラルの不足が関係していると言われています。具体的には、マグネシウムや亜鉛、ビタミンB群、ビタミンD、鉄の不足が関わっているようです。食習慣の乱れがある場合、血糖値の乱高下が激しいことが多く、血糖の乱高下が起こるとビタミンB群が減ってしまい細胞内にマグネシウムの取り込みが抑制されマグネシウムが不足してしまいます。その結果、カルシウム、マグネシウムバランスが崩れてしまい、こむら返りなど筋肉系の症状が出やすくなってしまいます。また、ビタミンB群が減ってしまうことで脳内ホルモン(セロトニン、ドーパミン、GABA)のバランスが乱れて様々な不定愁訴の引き金を引いてしまうことになります。
血糖の乱高下対策は、以前のトピックスにおいても触れていますが、①食事摂取の順番を守ること(野菜→肉魚→炭水化物→食後の運動を行う)ことと、②空腹時に炭水化物や果糖の摂取を避けること、③腸内細菌のバランスを確保(善玉菌リッチ)するために、劣化した脂や過剰な糖質摂取、アルコールの過剰摂取を避け、ビタミンDの豊富な食材(干しシイタケ、ちりめんじゃこなど)を摂取すること、④自律神経失調を来す体内時計の乱れを引き起こす生活(夜更かしなど)を避けて、消化管機能を適正に維持して腸内環境を整えること、が肝要です。
ちなみに、ビタミンB群はビタミンB群を豊富に含む食材の摂取以外に、腸内細菌が自前で作り出してくれますので、食物繊維や豆類を摂取して短鎖脂肪酸を増やしてあげることが良いでしょう。その際にビタミンDは栄養素の吸収の手助けをしてくれます。短鎖脂肪酸が増えると腸内環境が改善して、おのずと排便の量が増えやすいですので、便の量も体調チェックのバロメーターになり得ると思います。
また、ビタミンB群、鉄、マグネシウムは脳内ホルモンの生成に不可欠です。ことにマグネシウムの量が減ってしまうと自律神経失調の症状が出やすくなります。ことに幸せホルモンの代表でもあるセロトニンから睡眠を調節してくれるメラトニンが生成されますが、その生成にマグネシウムは不可欠です。食事では、にがりを料理に取り入れてみるのも一案でしょう。最近ではマグネシウムの入浴剤もでています。ただし、マグネシウムは腎臓病の方には注意が必要ですので、マグネシウムの量に関しては、かかりつけの医師に相談されたほうが良いでしょう。
不定愁訴の背景には、ビタミンB群、ビタミンD、鉄、マグネシウム、亜鉛などの不足が関わっていて、腸内環境が健全で、自律神経のバランスが整うように食事、睡眠、運動など日ごろの養生がなされたら不定愁訴の改善に効果が期待できると思います。
R6年5月 TOPICS
頑固なかゆみ
頑固なかゆみについて今回は触れてみたいと思います。季節の変わり目には、アレルギー性鼻炎や湿疹などの自律神経の乱れが少なからず関わっている疾患が起きやすいです。かゆみの引き金はヒスタミンがかゆみを引き起こしているとされています。事実、かゆみ止めは抗ヒスタミン薬が使用されていることからも明らかです。かゆみの誘因には様々なものがあります。
まず、①慢性的あるいは急性のストレス負荷がかかり(例えば、睡眠不足が続いたりとか心配事に日夜気をもんでいる事が多かったりとか)、ヒスタミンの過剰分泌を抑えてくれる体内に内在しているコーチゾールホルモンの分泌量が減るとかゆみが増強してきます。医療機関でしばしばステロイドホルモンの外用剤が処方されることがありますがステロイドホルモンを外から補っているわけです。
次に②その方に特定のアレルゲン、例えば、花粉、食材、食品添加物、農薬、化学薬品、電磁波などに暴露された場合(食材、花粉、動物、カビ類などアレルギー検査でしばしばアレルゲンが同定されることがあります)フリーラジカルが過剰に体内で作られてしまい肥満細胞からかゆみを起こすヒスタミンが作られるように指令が出て、かゆみを生じさせてしまいます。
③最近多いのが、腸内環境の乱れによるものです。以前にも触れたことがありますが、糖質過多の生活やアルコール過多の習慣、酸化した脂の摂取が多い場合は、善玉菌、日和見菌、悪玉菌のバランスが崩れてしまって、真菌(カンジダ)が増殖してシュウ酸が過剰に産生されてしまい、フリーラジカルが過剰に産生される結果となり、肥満細胞が刺激されて過剰なヒスタミンが作られ、頑固なかゆみが起こってしまいます。
④また腸内環境の乱れは腸粘膜に負荷をかけてしまって栄養素の吸収の際に腸内の毒素まで吸収してしまい肝臓で解毒が十分行われなくなってしまうと頑固なかゆみが起こってしまいます。かゆみを生じさせる誘因対策を心がければかゆみから解放されやすくなりますし、お薬の効果も上がると思います。
ポイントは、①睡眠不足にならないよう体内時計のリズムを整えることが出来るように、自前のステロイドホルモンが適切に体内で作られるように、早寝早起きの養生につとめること。②腸内環境の乱れを引き起こす食習慣(糖質、アルコール、酸化した脂の過剰摂取)にならないように気を付けることが大切です。これらの養生法にくわえて、医療機関において、個々の状況に応じてケースバイケースの漢方治療を補助的に使うと効果が出やすいと思います。
R6年4月 TOPICS
月経前症候群(PMS)と食事、栄養とのかかわり
季節の変わり目には、アレルギー性鼻炎や頭痛、めまいなどの自律神経の乱れが関わっている疾患が起きやすいですが、月経前に頭痛、イライラ、不眠、倦怠感など様々な訴えを呈する月経前症候群(PMS)の方は、季節の変わり目にはより症状が強く出ておられるようです。
PMSの方に日常の食生活についてお尋ねしてみると、3食きちんと食べていない、甘い物や果物の過剰摂取になりやすい、炭水化物中心の食事、劣化した油脂を含む食材、早食いなどなど胃腸に負担がかかりやすい食生活の方が多いようです。いわゆる血糖の乱高下を来しやすく、腸内環境を乱してしまう食習慣の方のようです。
腸内環境の乱れが起こると、お腹が張ってきたり、臭いガスが出やすくなったり、便秘や下痢などの便通の異常を来しやすくなります。善玉菌が減って、悪玉菌や日和見菌が増えてしまいます。ことにカンジダ菌が増殖してしまい、シュウ酸が増加し、ビタミンB6が消費されてしまいエストロゲンバランスが乱れやすくなり、PMS症状が色濃くなりやすいようです。ビタミンB6は身体の中で、脳内ホルモンや性ホルモンなど様々なホルモンの産生や代謝、自律神経のバランス維持に欠かせないものです。
月経前の様々な身体症状や精神症状にビタミンB6は関わっていますから、ビタミンB6をはじめとするビタミンB群が適正量体内に保持できるように、ビタミンBを無駄に消費させてしまうような食生活は避けたいものです。PMSの予防や治療に食養生は欠かせないと思います。
R6年3月 TOPICS
お肌の手入れに欠かせない食養生
春先から紫外線や花粉の影響で皮膚や眼や鼻の調子が乱れる方が多いようです。今回は季節の変わり目に注意しておきたいお肌のための食養生について触れてみます。
皮膚は1か月ごとに皮膚の深部の基底層から細胞分裂しながら押し上げられ核の無い無核化した角質層になり剥がれ落ちていくサイクルがあります。若年者は28日周期で、40歳以上では60日周期くらいで入れ替わっていくようです。このサイクルが円滑に回っていくには食事由来の栄養素が必要になります。皮膚のコラーゲンの材料には蛋白質、鉄、ビタミンB、ビタミンCが必要です。皮膚の基底層から角質層への細胞の分裂と分化には亜鉛、ビタミンAが必要です。皮膚の保湿を維持するにはコンドロイチン硫酸が必要で、肉や魚などの動物性蛋白質や緑黄色野菜やニンジン、シジミやアサリなども必要になります。また、血糖の乱高下を起こさない食事の摂り方(野菜→タンパク質→炭水化物の順番)も重要です。ニキビにはビタミンB2、B6、脂漏性皮膚炎にはビタミンB2、B6、掌蹠膿疱症にはビオチン、しもやけにはビタミンE、色素沈着(炎症後の)にはビタミンCが必要なことが多いようです。動物性蛋白質に種々のビタミン含有の食材、さらには血糖の乱高下を起こしにくい食事の仕方がお肌の手入れに欠かせないポイントであると思います。
きちんとした栄養を考えた食事があって初めて、お肌の手入れの効果が期待できると思います。
R6年2月 TOPICS
疲れが取れない
季節の変わり目のためなのか、なかなか『疲れがとれない』とお悩みの方が多いようです。様々な医療機関で検査を受けても特段、これといった異常は指摘されずうつうつとして相談にお見えになる方が増えています。このような場合、何かしらの原因あるいは誘因があって『疲れが取れない』、『だるい、重い』といった症状が出ているようです。
大きく分けて考えてみると、『睡眠』、『食事』、『運動』、『排泄』に関しての問題が関わっているようです。①睡眠不足が続くと深い眠りが得られにくくなるため、前日の疲れを取り除く成長ホルモンがきちんと出ないため疲れが残ってしまいます。また鼻や喉の粘膜が浮腫んでいる方は睡眠時無呼吸症候群の傾向があるため質の良い睡眠が得られにくくなります。②食事に関しては、暴飲暴食の傾向がある方や血糖の乱高下を来すような食事の仕方をする方は、自律神経のバランスが乱れてしまい疲れはとれにくくなります。③運動不足は血液の流れが停滞ぎみになり疲労物質が蓄積し疲れが取れにくくなります。④排泄が滞ると腸内に有害な物質が増えてしまい肝臓で充分に解毒されにくくなり疲れが取れにくくなります。
集約すると、慢性の炎症、慢性のストレス、血糖の乱高下、体内時計のバランスが乱れたための睡眠不足(夜更かしなど)が原因と考えます。これらの状態に陥ってしまうと、自律神経のバランスを調節してくれる副腎と脳の連携システムの働きが悪くなる、やる気をおこさせるドーパミンというホルモンの異常、細胞レベルで考えると活動エネルギーを作り出すミトコンドリアの機能異常がおこってしまい『疲れが取れない』、『だるい、重い』といった状態になると思います。『睡眠』、『食事』、『運動』、『排泄』を今一度、見直してみることも大切でしょう。
R6年1月 TOPICS
更年期障害に見られるめまい、ほてり
今回は、更年期女性に見られるめまいについて触れてみたいと思います。めまいの原因には様々なものがありますが、器質的な疾患が関連していないかをチェックする意味で、必ず脳神経内科、あるいは脳神経外科、耳鼻咽喉科での検査が必要です。
しかしながら、更年期女性のめまいの中には、めまいの専門機関で検査を受けても特段、異常が見られず更年期障害によるもの、あるいは自律神経の乱れによるものと診断され、対症療法で十分な効果が得られない場合もあり、対応に苦慮するケースも多いようです。
そこで今回は、なかなか改善しにくいめまいやほてりに対する東洋医学的アプローチについて触れてみたいと思います。
更年期障害に伴うめまいには浮遊性や回転性のものが見られますが、浮遊性のものが多いようです。また、めまいに火照り、ホットフラッシュを伴うことも多いです。頭頸部の血流が停滞気味で熱が篭った(瘀血、鬱熱)の場合と頭頸部のリンパの流れが滞る(水毒)の場合があります。これらの背景には自律神経の乱れ(特に、交感神経の過剰緊張、気鬱、気逆)が関わっているようで、
① 頭頸部に熱がこもっているケースが多いようです。そこで、頭頸部の血流を改善させるには、熱がこもっている箇所を保冷剤などで冷やすのも一案です。
② 頭頸部や胸の筋肉の緊張を緩めると頭頸部にこもった熱が解消されやすいようです。専門的になりますが、胸鎖乳突筋や大胸筋、項筋の緊張を緩めることも一案です。
③ 頭頸部の筋肉の緊張が強い場合、アキレス腱や腓腹筋の緊張が強い場合がしばしば見られることがあるため、アキレス腱や腓腹筋のマッサージやストレッチが頭頸部の筋緊張を緩めるのに有用な場合もあります。
④ 呼吸法では腹式呼吸によって横隔膜の緊張を緩めて、頭頸部の血流を改善させる方法も一案だと思います。
⑤ 漢方では、血液の流れをスムーズにする駆瘀血剤や筋肉の緊張をとる葛や厚朴、交感神経の緊張を緩め気の巡りを改善させる柴胡含有製剤、気逆と水毒を鎮める桂枝 + 茯苓の組み合わせなどが挙げられると思います。
更年期障害に伴うめまいは、ほてりやホットフラッシュを伴うことが多いですが、器質的な疾患が隠れていないかどうかを、まずは、めまいの専門医療機関で検査を受けることが必要です。精密検査の結果、特段、異常が見られず、更年期障害に伴うもの、あるいは自律神経の乱れによるめまいと診断された場合、前述のマッサージやストレッチ、呼吸法、クーリング、漢方治療などケースバイケースで東洋医学的対応を取り入れることも一案でしょう。かかりつけの先生にご相談されると良いでしょう。