元気の源は食であると言われますが、もっと突っ込んで言うと『腸内環境』からであると言えると思います。食べ物は口腔から食道、胃十二指腸、小腸、大腸といった管腔臓器を通過する過程で、消化や吸収がそれぞれの場所で行われます。
小腸と大腸は、異なった構造と機能を有しています。小腸には内壁に微細な絨毛が絨毯のように繁茂しており、消化液によって分解されたアミノ酸や糖や脂肪酸などの栄養素を効率よく吸収する機能を持っています。栄養素吸収のメイン会場でもあります。
一方、大腸には小腸のような微絨毛はなく、ナトリウム、カリウム、クロールなどの電解質や水分の再吸収や消化されなかった食物残渣を固めて一時的に貯蔵する働きがあります。ここで、問題になるのが腸内細菌です。腸内細菌により発酵が行われビタミンB群やビタミンKが産生されます。ザックリ言えば、小腸では主に食物の消化と栄養素の吸収、大腸は水分の吸収と消化されなかった食物残渣の圧縮と貯蔵、運搬、排泄に関わっていると言えます。
ここで問題になるのが、腸内細菌のバランスです。腸内細菌には、善玉菌、日和見菌、悪玉菌がありますが、これらのバランスが問題になります。善玉菌が減って悪玉菌や日和見菌が増えすぎると腸内細菌叢に乱れが生じます。これを専門的にはディスバイオ―シスといいますが、この状況が元気の源を損なってしまうのです。
腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオ―シス)の主な原因として、3つに大別されます。
① 食生活や薬剤によるもの : レトルト食品などに依存した食生活、甘いものの摂りすぎ、過量なアルコールや喫煙、偏食傾向、野菜が少ない食生活、長期間の抗生物質の服用などが挙げられます。
② 睡眠不足や運動不足あるいは過激な運動など生活習慣の乱れによるもの : 慢性の視床下部―下垂体―副腎の機能調節の乱れ、巷でいわれている慢性疲労状態です。
③ 腸管の慢性的な炎症 : 悪玉菌がはびこってしまう状態、ナッツやアーモンドなど古くなった食材に含まれるカビ毒など存在、①で述べた食生活などが挙げられます。
善玉菌がある程度存在していれば、悪玉菌や日和見菌の過剰増殖を抑えられますし、腸を健康にする免疫物質であるIgAをしっかり産生出来ます。また食材からビタミンB群やビタミンKを産生してくれます。善玉菌にもいろいろ種類があって、それぞれの善玉菌が協力し合って、その結果として腸内の免疫環境を健全なものにしてくれています。要するに、多くの善玉菌がそれぞれの役割分担の軽重はあっても相互に協力しあっています。腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオ―シス)を起こさない日々の養生に心がけたいものです。元気の源は健やかな腸内環境から得られると思います。